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ゆれるなかにこそ、まっすぐにすすむ道もひらけてくるのである。

 夏の湖畔。その湖畔に夏の嵐。いつもは鏡のように静かな湖面も、きょうばかりは鋭い風が吹きぬけ、白い波があわだつように舞い立つ。別に寒くは無いけれど、暗く押しかぶさる雲の下を、風とともに時折、帯のように雨が走る。

 その嵐の湖面に、一そうの和船。船頭がけんめいに櫓をこぐ。押して引いて、押して引いて、そのたびに船は右にかたむき、左にかたむく。

 押してかたむき引いてかたむく。船のへさきも右にゆれ左にゆれる。それでも巧みなバランスで、船はゆれつつもまっすぐすすむ。右に行きっ放しにもならなければ、左にかたむきっ放しにもならない。まっすぐに前進する。風に向かって前進する。

 ゆれるよりもゆれない方がよいけれど、ゆれないことはすなわちとどまること、そして流されること。ゆれるなかにこそ、まっすぐにすすむ道もひらけてくるのである。

 激動の嵐が吹く世界。その世界のなかの日本。ゆれにゆれはするけれど、その進む道について、時には一そうの和船の姿も思い浮かべてみたい。

 松下幸之助 (続 道をひらくより)

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